<アイティ(Vn×富川勝智(Gt):パガニーニ・ミーティングスvol.6
2020.9.5(土)14時~M's Cantina

デュオ1
まだまだ残暑厳しい日が続いていますが、9/5パガニーニ・ミーティングスを聴きに駒澤大学駅徒歩1分の「エムズ・カンティーナ」さんに向かいました。鬼才パガニーニの作品のみを演奏するというこの企画はいつの間にかvol.6まできていて、驚きました。今回はパガニーニの相方のレニャーニの作品も登場するとのことで、さらに深くなりそう・・・とても楽しみにしていました。
パガニーニと言えば、黒いマントを身につけた肖像画が浮かび、これだけでも悪魔的という印象は受けます。でも実際に聴いてみると、その音楽にはイタリアの自由気ままな、明るい気質もたくさん感じます。今回も超難関のパガニーニの作品にアイティ&トミーデュオがどう挑むのか?!プログラム順に感想を書いてみようと思います。

~前半~
お2人が夏らしい衣装で登場されます。弦楽器2台にお目にかかれるのは久しぶりで新鮮でした。
1.Centone Sonata no 5VnGt
6曲あるうちの5つ目の曲とのMCから始まりました。この曲の入りの心地よさは久しぶりに味わった感覚でした。キリリと歯切れ良い明るい雰囲気いっぱいの曲でした。ヴァイオリンとギターの音色が絶妙な重なりで雄大な空間の中にも細やかさがあって、バリエーションに富んでいました。それぞれの楽器の特徴を生かしてのカデンツァもとっても良かったです!入りとラストがすっきりしていて好きでした。パガニーニの中では極めて普通に聴ける曲とのことで、この先が楽しみになりました。
写真はプログラムと本日のお供です。
今日のお供
2. Opera no.5VnGt
名ばかりソナタ?!とMCがありました。6つのソナタから出来ているとのこです。その1つ1つは2部形式からなるようですが、3段くらいで1部が終わってしまうような短さで、とにかくあっという間に終わるとのことでした。楽譜もしっかり見せて頂きましたが、ソナタ1曲が長くて1ページという感じです。MCの覚え書きですが、私のメモには、ソナタNo.1は①情熱的な②気取って、No.2は①アモーレ②シンプル、No.3は①元気な②粋な、しゃれた、No.4は①センチメンタルな②あざける感じ、No.5は①上品な②生気に満ちて、No.6は①うっとりするような②華やかなと書き留めてありました。確かに短いですが、各ソナタにその雰囲気を感じ取ることができました。共通して、1部に対して2部は細やかな音使いで表現されているように思いました。それぞれに美しさ、鋭い感じ、軽快さ、のびやかさ、前向きさを感じ、間が素敵だなぁと思ったソナタもありました。短い中にもストーリーを感じ、頭の中で場面転換していました。短編の中にこんなにインパクトのある表情を出せるのもパガニーニの才能かもしれません。
デュオ2
3. Caprice no.24Vn
アイティさんはここで靴を脱ぎせて増す。パガニーニの超難関のカプリスに挑む覚悟でしょうか。緊張感と意気込みが感じられました。何度か聴かせて頂いていますが、アイティさんのカプリスno.24は風格が出てきたような感じがしました。音程感や重音の響きにやはり不気味な、悪魔的なものを感じます。うねり感があってゾクゾクさせられました。ありとあらゆる奏法が組み込まれているようで、最後まで息をのんで演奏に聴き入りました。会場内、エネルギーが一気に高まりました。大きな拍手です。
(アンコール中の写真なので、靴かきちんとを履かれています!(笑))
アイティさんソロ
休憩をはさんで後半です。
~後半~
4.short piecesGt
MS89 アンダンティーノとMS84 ソナタno.1がギターソロで演奏されました。2曲とも予想以上に聴きやすくてエチュード的な感じもしましたが、アンダンティーノは低音が入った時の響きがちょっぴり悪魔的な独特なものを感じました。ソナタはシンプルな和音の連続がとてもさわやかな響きで心地よかったのですが、左手の押さえには悪魔的と思える難しさがあるように思えました。それでも素直ないい曲でした。ギターの音色は芯があってとても美しかったです。パガニーニのソロ作品はなかなか聴くことができないので貴重な機会でした。

トミー先生ソロ

5.Mose FantasyVnGt
この曲はトミー先生がアレンジされたそうです。ロッシーニの曲がテーマになっていて、ヴァイオリンは超絶技巧とのこと、G線しか使用しないとのMCがありました。最初から心に染みるメロディーが流れました。G線のみなのに太くてしっかりした意志が感じられるメロディーラインでした。これが生きるのは伴奏を担当するギターのすごさでもあり、楽器の相性も抜群でした。後半はテンポアップして、さらに巧みな技術を見せて頂きました。G線上のみ移動するアイティさんの左手の動きに見入ってしまいました。

6.Gran duette 2nd mor by Lenani(Vn・Gt)
この日、楽しみにしていた曲でもあります。パガニーニの相方のレニャーニの作品です。レニャーニもヴァイオリン兼ギターにも精通していたとのことで、お互いを高めながらヴァイオリン&ギターのデュオをやったそうです。パガニーニの24のカプリスに対抗?したのがレニャーニの36のカプリスのようです。転調が特徴とのMCがありましたが、この曲はギターのゆったりと奏でるアルペジオにヴァオリンのしなやかに伸びる高音が調和して美しかったです。同じメロディーをそれぞれの楽器で同時に奏でるのも良い響きでした。レニャーニはギターの制作もしていて、シュターファーという19世紀ギターがあるようですが、ピッチが良くて転調には向いている、さらにモダンギターに近いとのMCもありました(次の曲へもへつながります。)。パガニーニミーティングスには、こんな風にレニャーニも登場し、かなり深くなってきました。こんな風にMCを交えながら聴いていくと、時代背景や曲の理解も深まりますね。

デュオ3
7. Barucaba Variation MutaⅡ(Vn・Gt)
パガニーニの晩年の作品で、ヴァイオリンコンチェルト風に作られ、ヴァイオリンもギターもカプリスと同等の超絶技巧で転調のバリエーションに富んだ曲です。“muta ムタとは“キー”を現わすとのことで、1ムタは20のバリエーションがあり、プログラムの裏面には20のキーがずらっと記載されていました。見ただけでもすごいです!
転調
♯や♭が多くなるとそれだけで大変です。。。その上、同じ拍子の中でそれぞれが違う動きをするそうで、合わせも難関です。それを感じさせない堂々たる演奏で、ヴァイオリンのピチカートやトリルは見せ場ですね。ピチカートはかわいらしい表情も出せてとても好きな奏法です。ギターの転調はものすごく難しいですが、滑らかな軽やかにバリエーションが移っていくところはさすがだなぁと思いました。キーはCから始まりCで終わります。1つ1つは短いですが、一気に20まで、変化を感じながら楽しく聴きました。大曲でした。

そしてアンコールは必ずこの曲!とのことでした。
~アンコール~
Cantabile(Vn・Gt)
パガニーニの作品の中でも群を抜いて美しい曲だなぁと思っています。悪魔的と言われるパガニーニにこんな素敵な曲があったのか?!といつも思います。上品さ、優雅さを兼ね備えていて、心に沁みます。アイティさんの第2弾のCDにも収録されていますが、やっぱり生で聴けるとその良さが倍増します。クラシックギターが細かく刻む和音にヴァイオリンのうねるような美しい歌いまわしが最高で、酔いしれます。イタリアの明るい風景が浮かんでくるよう・・・とても幸せな空間でした。

デュオ4
このパガニーニミーティングスを聴くのは3回目になります。この日、パガニーニの作品を聴いて、悪魔的な表情の奥には強烈な孤独感みたいなものも感じました。それとは裏腹に何とも明るく自由な、優美な曲にもたくさん出会えたので、心の内面はやさしさに溢れているのだろう・・・なんて勝手に想像してしまいました。パガニーニの作品は場面転換が見事で、短い中にいくつものインパクトある表情を出せるのはやっぱり鬼才です。本当にすごい技だと思いました。同時代を過ごした相方のレニャーニのお話が聞けたことも本当に貴重でした。ヴァイオリンにもギターにも精通したお2人だからこそ、ある意味独特な作品が生まれたのだと思います。ヴィルトゥオーソと言えるお2人ですね!!
そんな作品に挑むアイティ&トミー先生のデュオはまた素晴らしかったです。
ヴァイオリンは音の伸びからしてもスケールが大きいです。でもその伴奏には繊細で細かいコントロールができるギターがよく合うし、逆転してギターが旋律をとるところもまたいいなぁと思いました。ヴァイオリンとギターは異種の楽器ですが、相性もとても良かったです。回数をこなすにつれて、熟練度も増してきているように思いました。演奏の写真はお2人がきりりと!とても良い表情で撮れたので、雰囲気が伝われば嬉しいです。数年は続くであろうであろう・・・covid-19ですが、今回もしっかり対策しながら、生演奏に浸ることができました。一緒に聴きに行った友人も、生演奏に勝るものはないと、すごく感動していました。この感動を同じ空間で共有できてとても嬉しく思います。幸せな時間を過ごせました。次回パガニーニミーティングスvol.7は11/1(日)14時~会場はここ!「エムズ・カンティーナ」さんです。さらに深くなりそうで楽しみです♬ありがとうございました。

最後に・・・
コロナ禍の中で、アイティさんが自宅で収録されたというソロアルバム第1弾(白)、第2弾(赤)はアイティさんが自ら販売し、その収益はコンサート予定会場であったエムズ・カンティーナさんと分配されるそうです。この会場で撮影された富川先生のクラシックギター奏法伝授のDVDはエムズ・カンティーナさんから発売されています。どちらも内容は素晴らしいので、たくさんの方に広めたいです♬
サイン入りCD
アイティさんの赤いCDにはヴァイオリン&ギター演奏も収録されているので、お二人にしっかりサインも頂きました。プログラムと共に記念撮影しました。
そして・・・ギターの仲間とマスク姿ですがこんな写真も撮れて、良い記念になりました(^^♪
ひろこさんと!
<Vol.6 プログラム>
~前半~
1.Centone Sonata no 5VnGt
2.Opera no.5(Vn・Gt)
3.Caprice no.24(Vn)
~後半~
4.short pieces(Gt)
5.Mose Fantasy(Vn・Gt)
6.Gran duette 2nd mor by Lenani(Vn・Gt)
7. Baru caba Variation MutaⅡ(Vn・Gt)
~アンコール~
Cantabile(Vn・Gt)

パガニーニミーティングス

 




















この日の空です。秋らしくなりましたね。

帰りの雲